ジゴキシン (2011/12/19追加)

 ジゴキシン 

 1)   有効血中濃度  0.5~2ng/mL(mg/L)

 ●有効濃度に関しては各種の報告がある。0.8~2.0ng/mLで、2.0ng/mL以上では中毒症状の発現頻度が高くなるとされてきた。
 しかし、最近のわが国の報告では、0.5~1.5 ng/mL、 0.5~1.0 ng/mLなどが治療域として提唱されている。
 また、洞調律の心不全患者における死亡率をエンドポイントにおいた試験では、上限とする治療域は下方修正し、1.2~1.5 ng/mLを上限とすることも考えられる。
 

● 中毒症状
 

血中濃度

中毒症状

2 n/ml以上

食欲不振、咽気・嘔吐などの胃腸症状、頭痛、色覚異常などの中枢神経症状および不整脈、網膜障害

 

 

不整脈は心室性期外収縮の発生頻度が高く、この不整脈の症状は心不全の症状に似ているため、血清中のジゴキシンの濃度測定によって識別する必要がある。
また、血中のカリウム、カルシウム、マグネシウムなどの電解質平衡に異常がある場合や低酸素症などの場合には、心筋の感受性が高まっており、効果とジギタリスの血中濃度との関係が正常時とは異なると考え、血中濃度が治療濃度域内であっても臨床症状に十分に注意を払う必要がある。

 

●EASY TDMでは有効血中濃度の0.5~1.5μg/mLに黄色を塗って表示していますが、自由に幅を設定する事が出来ます。

 ●腎障害時にはジゴキシンの腎排池率が小さくなり、消失半減期が延長し血中濃度が高くなる。
甲状腺機能充進の状態ではジゴキシンの吸収率低下、分布容積の増大、糸球体濾過速度の増大による腎クリアランスの増大から血中濃度は低下する。

●  ジゴキシンやジギトキシンの薬物相互作用は、多岐にわたってみられる。

2)   採血時間  トラフ(服用直前)  推奨


しかし、分布相(少なくとも静脈内投与後4時間以内もしくは経口投与後6時間以内)を避けた採血時間であれば補わない。  出来るだけ投与前で・・・m(_ _ )m  
採血時間は、きっちりチェックしておいてください。重要です。
①     採血時間は、理想的には維持投与の開始または変更の7~12日後に採取する。
②    定常状態には7~10日間で到達する。
末期腎障害患者では,定常状態に到達するまで15~20日間を要する.
 

トラフを推奨する理由は、

● 1日の血中濃度の幅があるためピーク値に達する時間を予測することが困難なため。

●また、どの薬剤(内服薬の場合)でも、吸収における個人差は大きいので、吸収に影響のないトラフ濃度を測ることが多いため。

● 血漿タンパクによる血中濃度上昇評価が難しいため。

  引用参考文献

  1. 薬剤師・薬学生のための実践TDMマニュアル編集:伊賀立二、乾 賢一 株式会社じほう
  2. TDMポケットガイド ;薬局新聞社
  3. ウィンターの臨床薬物動態学の基礎 投与設計の考え方と臨床に役立つ実践法:マイケル・E.ウィンター/樋口駿  テクノミック/じほう

( 文責 小西 正晃  )