フェニトイン(2011/12/19追加)

● フェニトイン ●

1)有効血中濃度  10~20μg/mL

 ●フェニトインは濃度依存的に中枢神経系の副作用が出現し、高濃度となると意識障害、血圧低下、呼吸障害が生じます。また過量投与によりてんかん発作の頻度が増大することもあるのでフェニトインのTDMは必須と考えられています。
●フェニトインは肝臓におけるミカエリス-メンテン型の代謝を辿りますが、投与量の増加に伴い、代謝の飽和によりある時点から急激な濃度の上昇をもたらします。そのため個体差の最も大きな薬物です。
●ミカエリス-メンテン式のパラメータはミカエリス定数は一定で、加齢に伴いVmaxが低下するという報告があります。
●EASY TDMでは有効血中濃度の10~20μg/mLに黄色を塗って表示していますが、自由に幅を設定する事が出来ます。
●慢性腎疾患、糸球体腎炎、ネフローゼ症候群患者では、アルブミン濃度の低下によりフェニトインのタンパク結合率が低下するため、血漿中総濃度が低下します。タンパク非結合型が増大することで脳内への移行が増すので一般的な治療域でも中毒症状があらわれることがあります。
●過量投与時の主な初期症状には眼振、構音障害、運動失調、眼筋麻痺があります。特別な解毒剤はないので人工呼吸、酸素吸入、昇圧剤の投与など適切な処置を行います。重症時には血液透析を考えます。
●抗てんかん薬の治療濃度範囲の値はそれぞれの抗てんかん薬を単独で服用した時、70~80%の患者で発作が抑制されるときの濃度範囲であり、すべての患者で発作が完全に抑制されるわけではありません。
 すなわち、難治性の患者では、より高濃度にする必要があったり他の抗てんかん薬の併用を必要としたりする場合もあります。また、長期にわたって、てんかん発作が抑制されている場合は、治療濃度範囲の下限以下の濃度であっても効果が得られていることが多い。 抗てんかん薬は、連用中に急に投与を中止すると離脱症状が現れ大発作を引き起こすことがあるので徐々に減量する必要があります。

 2)採血時間  定常状態でのトラフ(服用直前)  推奨

 非線形を示す薬物であるので、血清中フェニトイン濃度が定常状態に達する時間は、投与量の増大に伴って延長し、濃度が10μg/mL以下になるような投与量では2週間以内ですが、20μg/mLでは約4週間を要するので投与量変更後の測定結果には注意が必要です。

3)トラフを推奨する理由は、

●1日の血中濃度の幅があるためピーク値に達する時間を予測することが困難なため。
●また、どの薬剤(内服薬の場合)でも、吸収における個人差は大きいので、吸収に影響のないトラフ濃度を測ることが多いため。
●血漿タンパクによる血中濃度上昇評価が難しいため。

 

引用参考文献
1.薬剤師・薬学生のための実践TDMマニュアル 編集:伊賀立二、乾 賢一 株式会社じほう
 

2011/11/29 改訂 ( 文責 小西 正晃  )