バンコマイシン(2011/12/19追加)

● バンコマイシン ●

1)有効血中濃度  

  トラフ値        10~20μg/mL(必要時15~20ug/mL)

 

●最小発育阻止濃度(MIC)=1μg/mLの場合、有効性の指標となるAUC/MICを400以上にするには理論的にはトラフ値15~20μg/mLが必要となります。しかし腎機能正常患者では通常量での使用では達成が困難であり、高用量(≧4g/日)での安全性は十分に臨床的に確認されているとは言い難く、腎障害などの副作用が高率となる可能性があります。そのため最初の投与設計ではトラフ値10~15μg/mLを目標とし、感染巣、初回TDM実測値、臨床経過や感染病巣の変化、分離MRSAのMIC値を参考に、必要と判断すればその段階で15~20μg/mLを狙うことが推奨されています。

●MRSAに対するバンコマイシンの最小発育阻止濃度(MIC)は1.56~3.13μg/mLであり、点滴終了1~2時間後の血清中濃度を25~40μg/mLの範囲にコントロールすることが治療濃度の目標として推奨されています。バンコマイシンは時間依存的に効き目を発揮するので、この濃度を目標とすることで、多くの感染部位でMRSAに対し十分効果が期待できます。

●バンコマイシンで特に注意すべき副作用は腎毒性、聴覚障害です。これらの副作用は血清中濃度と関係しており、多くの場合は血清中濃度をコントロールすることで回避できます。血清中濃度が60~80μg/mL以上で持続したり、トラフ濃度が約30μg/mL以上で持続すると聴覚障害が起きる可能性があるといわれています。

●血清中濃度に関係しない副作用としては、レッドマン症候群や薬疹、肝機能異常、血液所見異常などが報告されています。

採血時間   トラフ(服用直前) 推奨
しかし、施設の測定環境や採血目的、患者様の状態によって測定可能な時間帯などさまざまな環境があると思います。 出来るだけ投与前で・・・m(_ _ )m  
採血時間は、きっちりチェックしておいてください。重要です。

2)トラフを推奨する理由は、

●1日の血中濃度の幅があるためピーク値に達する時間を予測することが困難なため。
●また、どの薬剤(内服薬の場合)でも、吸収における個人差は大きいので、吸収に影響のないトラフ濃度を測ることが多いため。
●血漿タンパクによる血中濃度上昇評価が難しいため。

3)真のピーク濃度である点滴終了時でなく、点滴終了1~2時間後の濃度を指標にする理由は、

●バンコマイシンの血清中濃度が2‐または3‐コンパートメントモデルによって近似される推移となるため。
●点滴終了直後の血清中濃度は急激な減少を示す分布相となっており変化のバラツキが大きいため。

引用参考文献
1.VancomycinのTherapeutic monitoring(TDM)実施に関する抗菌化学療法
2.認定薬剤師制度認定委員会ならびに抗菌薬TDM標準化ワーキングの見解
3.日本化学療法学会雑誌 VOL.58 NO.1 18-19
4.薬剤師・薬学生のための実践TDMマニュアル 編集:伊賀立二、乾 賢一 株式会社じほう

 
2011/08/18 改訂( 文責 小西 正晃  )