TDMをはじめるにあたって

 薬剤師の職能を発揮できる業務の1つに血中薬物濃度モニタリング(TDM) があげられます。

 ここにTDMの基礎研究に関する報告は多いものの、はたして日常業務にTDMが十分に活用されているかということには疑問が持たれます。

実際、測定を行っている薬剤部(薬局)が限られていること、TDMは理解し難いものと思われがちであることなどの理由からTDMが特定の施設に限られて行われている感は否定できません。

 TDMの目的は、「得られた測定値にもとづいて適切な処方設計を実施すること、もしくは服薬を遵守するよう患者にはたらきかけること」です。したがって血中濃度の測定は必ずしも薬剤部(薬局)で行う必要はありません。そして、パソコンが身近なものとなり、優秀な薬物動態解析ソフトが多数登場している今日、薬物動態の解析を行えるには目的に合致した解析ソフトをいかに正しく使いこなせるかにあると思われます。

 すなわち、解析ソフトにおいて展開されている関数を数学的に学ぶよりも、まず如何に医師等に対するプレゼンテーション(血中濃度の推移曲線の提示など) が効率よく行えるかを学ぶべきであると思います。

 これまでは前者の方に重点が置かれていたため、入門書の多くで難解な理論や数式が先行し、その結果TDMが敬遠されていたように思われます。

   このEasyTDMでは、まずプレゼンテーションの方法に重点を置き、TDMに対する拒絶感を抱かれないように留意し構成したつもりです。  従いまして、解析のプロセスを全く理解していなくてもそれなりの結果を得ることができます。

 

(元香川大学附属病院薬剤部)
日本大学薬学部教授 
福岡憲泰